essai 2012年8月
272.朝食メニューの結婚式
(8月5日更新)
週末はまあ一応安定して予約が入っているが、平日はガラガラだ。再来週には平日に数百名の大きなものが2つほどあるが、来週は数十人のバンケとも言い難い規模のものがちょっと入っているだけ。とても夏のシーズン真っ盛りという状況ではない。昨日の土曜は週末とは言え、僅か100名程度の結婚式。しかもそのメニューがタイトルにある様に朝食メニュー。ソーセージだのベーコンだのスクランブルエッグだのをおかずに、フレンチトーストやらパンケーキやらを食べての夜の披露宴は一種異様だ。場所も大広間だからトーテムポールに囲まれているし、ユニークさでは群を抜いている。
久々に顔を合わせたヒューゴが「朝食メニューって、何処の国の人たちなんですか」と言うから「カナダ人だよ。ケベックのフレンチカナディアンが多いよ。こっちの習慣じゃないの」とからかうと、「そんなの初めて聞きましたよ」とケベッコワの面子に関わるとばかり憤慨していた。
しかし昨日は蒸し暑さがピークに達し最高気温が37度。体感温度は40数度。夜になっても20数度の典型的熱帯夜だったから、朝食メニューくらい軽くて丁度良かったのかもしれない。
朝食メニューのまま10時半には追加料理?としてケベック名物プティーン(解説する気にならないので知らない方は検索してください)を足したのみでそれでも深夜まで続いたが、何人も残っていてもしょうがないので9時以降は私1人残ってやっていた。
まあしかしこの熱帯夜。外が20数度ならエアコンの無い私の部屋は備え付けの温度計に目をやるのも嫌になる35〜36度にはなっているはずで、涼しい大広間に深夜過ぎまでいた方が、これまた結果的に楽だった。明日の月曜以降少しは気温は下がる見込みだが、これを書いている5日の深夜現在は今も室温は35度。昨日と変わらない。もっとも昨日早く帰宅していれば電気を付けたり自分の体温などで更に1〜2度上がり、調理用のストーブ(コンロ)でも使えば40度近くになっていたかもしれない。勿論それが分かっていたから昨日は職場からサンドウィッチを持って帰って夕食・・というか夜食の時間だが、味見以外は基本1日1食しか食べないので。
273. 今回は成功した大ビュッフェ。
(8月15日更新)
今日は週の半ば水曜日としては珍しく400名を超える大ビュッフェであった。デーブが怪我したとかで週末からいない中、土曜の夜2件の結婚式を終えて翌日曜の朝から仕込みに入った。その間大きなバンケもなく、3日間殆どこのビュッフェの準備に費やした格好だ。
それと言うのも先月1000人以上のビュッフェで、ただでさえデーブとゴードンがブルース フェスティバルに出張していて人が足りない中、僅か1日でミザーンプラスを済ませてえらい目にあったからだ。私が計算した量の半分以下の料理でジョルジュが足りると判断した結果、案の定すっかり料理が出払って最後にはカフェテリア用の冷蔵庫からピザだのなんだのファーストフードまで持ち出してサーブすると言う前代未聞、とてもまともな宴会場の仕事とは思えない恥ずかしい事態にたち至ったのだ。しかもジョルジュは最後まで残らず帰ってしまい、サービス スタッフから「あの人が厨房の責任者」と聞いたらしいお客様が全部で4人も個別に激怒して私の所へクレームをつけに来た。「何でこんな時ばかり私が・・・」と思ったが、まさか「いやあ私もこれじゃ足りないと思っていましたよ」と言う訳にもいかず、ひたすら平身低頭で謝っていた。何かいかにも日本人的だ。
その甲斐あって?今回はジョルジュも「今回はいくら余ってもカフェテリアやビストロで使うから心配しなくていい。魔の火曜日(前回のそのビュッフェは火曜日だった)を繰り返すな」と有り難いお言葉を頂いたので(正直あんたが言うなよと内心思ったことは否定しない)、十二分に用意し、カクテルパーティのアミューズブーシュから、その後の食事も冷製魚介類のステーションだけでも鮭のマリネ、蟹とチョウザメのクネル、海老のカクテルなどを山ほど用意し、テリーヌなどの冷製肉類、サラダ、それぞれに別々のステーションを設けた上で温製料理も肉料理、魚料理、野菜料理を絶対余る分量用意した。勿論デザートも同様。デザートはパティシェを置かず、基本購入するだけで、今回もクレムブリュレだけ自家製のものを出すと言う事だった為、10種類以上もデザートがあるのだから150人前もあれば足りるクレムブリュレを私自身で全員が1個ずつ食べても足りる400人前作った。400人前を2〜3人の誤差で(勿論2〜3人強)ほぼ計算どおり作れたのは昔とっ杵柄のお陰か。サクランボ風味も人気で面目躍如した。
勿論料理全般も喜ばれ、まずは良かった。ジョルジュも来週にはいよいよ辞めるので、ここでけちをつけたくはないだろうから今回は時間も人員も予算も十分に与えてくれた。何時もこうなら仕事は楽なのだが・・・。
274.コンパスグループの契約は・・・
(8月25日更新)
先週でジョルジュが去り、当分の間はコンパスグループ直属の共同シェフなるテッドと言う人物が送り込まれてきたが、彼は料理の経験はそれこそカフェテリア・・食堂程度の経験しか無いらしく、食材の発注、予算の管理といった事をオフィス内で行うのみの様だ。デーブにしても仕切る事には長けてきた様だが、何しろレストランで働いた経験も無く、宴会もここに来てから経験した程度で料理の知識が驚く程無い上、ジョルジュの残したフランス語のルセット(レシピ)はまるで読めないらしい。そんな訳で私もまた少し仕事が増えてきたが、このタイミングで少しは宴会の予約が増えてきたから皮肉なものだ。
しかし、以前から神林シェフに「そろそろ博物館とコンパスグループは契約が切れる頃の筈」とお聞きしていたが、後半年程度でその時が来るらしい。博物館はコンパスグループの仕事に満足していないと言う噂もあり、その後の契約更新は微妙な情勢だ。共同シェフは長居するつもりは全く無く、早く新総料理長を迎えたい様だが、こんな時に就任する総料理長は火中のクリを拾うようなもの。果たしてなり手がいるのだろうか?
私としても正直新しい職場を模索しているのだが、こんな時に限ってオファーが無い。わりと仕事に満足しているような時には2件も3件も誘われたりするのに・・・まあ、そういうものなのかもしれない。何処の会社でも勢いに乗っているような人間こそ欲しいのだから。
275. 明日からケベックシティに。
(8月30日更新)
去年はこの国立文明博物館で「日本、伝統と革新展」をやった訳だが、今年はケベックシティにあるケベック州の文明博物館で「サムライ展」をやっているから面白い。その一環として、9月1日から3日までサムライにインスパイアされた料理のデモンストレーションをケベック州日系料理人協会が担当させていただく事になった。
そういう訳で私も明日の夜仕事が終わってから空港に直行しケベックシティ入りする。1月近く前に休暇申請したが、何しろジョルジュは自分が間もなく辞めるタイミングだったから、数日で許可を降ろしてくれた(苦笑)。
土曜に2件、日曜に1件、それぞれ100人クラスの結婚式が入っているので皆に悪いが、仕込みの段階で自分が引き受け、デーブには2日程休んでいてもらうと言う事で勘弁してもらう。どうもその後来週は週末まで暇な様だが。
ケベックシティは丁度10年ぶりだ。詳しくは帰ってからと言う事で。